偶像崇拝

作:冷凍石

 

「ぐっ、ぐおおお!!」

 バーバリアンの身体が、足の先からゆっくりと石になっていく。使い古された革のブーツが灰色に染まり、それと同時に足の指や甲の感覚が痺れるように失われていった。

「ぐううう!!」

「あんたみたいな筋肉バカに倒されるほど、私は甘くないよ。石になりながら、おのれの未熟さを噛み締めな。」

 頭の蛇を揺らめかせながら、メデューサは少し離れた場所で、男の慌てる様を楽しげに眺めている。

「うおおおおおお!!」

 危機的状況から逃れようと力が込められ膨れ上がった腓腹筋が、その緊張を解くことなく硬く変質していく。石化の侵食は確実に進み、少し曲げられた膝を飲み込み、筋骨隆々の太腿へと這い登ってくる。大腿二頭筋と大腿四頭筋が、見事な盛り上がりを見せながら石に置き換わっていった。

「ぐがあああ、ぐぬううう!!」

 巨大な剣を闇雲にバーバリアンは振り回す。しかし、足を固められた今となっては、その剣先がメデューサに届くはずもない。

「無駄なことを。おや、石化はそんなに気持ちがいいのかい?それとも、私の身体を見て興奮したのかい?いやらしいねえ。」

 メデューサの皮肉な笑いが辺りに響く。

 バーバリアンの股間では見事な逸物が急速に膨張し、腰布を押し上げ巨大な城を作り上げていた。石になるという焦りと石化がもたらす未知なる刺激が、股間への血の巡りを良くしたらしい。

「ぬおおおおおおおおおお!!」

 バーバリアンは指摘を打ち消すように更に剣を振り回したが、メデューサに掠らせることすら出来なかった。

 バーバリアンが僅かに身に付けた衣類である腰巻が、その内部に隠された肉体諸共、石になっていく。布を押し上げ自己主張を続けていた硬い肉棒も石化の波に飲まれ、巨木の如き威容を保ったまま石にされた。不思議なことに文字どおり剛棒と化した孤高の暴れん坊は、他の部位とは違い感覚が残っており、熱いたぎりが醒めることはなかった。

「いいねえ。まさに石の棍棒。後が楽しみだよ。」

 メデューサは、その布を押し上げ見事な盛り上がりを見せたまま石化した、バーバリアンの股間を見つめながら舌なめずりをしている。髪が蛇であるところ以外は、妖艶な美貌を誇る成熟した女の裸形と何ら変わりが無いため、その舌を動かす様は背徳的で淫靡だった。

 カラン、カランカラン…カラン。

 刀身にルーン文字が刻まれた、刃こぼれ一つない、剣と呼ぶにはあまりにも無骨で巨大な剣と、表面に無数の傷が入った、全身がかくれるほどの巨大な盾が、石化の影響で力の入らなくなった男の指からこぼれ落ち、石の床に高い音を立てて転がった。

 巨大な剣と盾を握っていた厳つい指が、空を掴むように開き、ジリジリと灰色に置き換わっていく。手の甲に浮き上がった血管と筋が、男の無念さを端的に表していた。

 取り付いた何かを振り払うように腕を振り回すが、石化の進行は止まらない。様々に形を変える肘筋の姿が永久的に固定され、留まることなく肘を侵食していく。

 拳を振り上げるように曲げられた左腕で、極度に収縮しこんもりと盛り上がった上腕二頭筋と、剣を取る為に床へと伸ばされた右腕で、その存在を不必要に自己主張する上腕三頭筋が、その見事な姿のまま石の塊に変わっていった。

 下腹部を飲み込んだ石化も、情け容赦なく進行していく。見事に割れた腹筋がミシミシと灰色の石肌へと変わっていった。

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ…。」

 石化からはもはや逃れられないと悟ったバーバリアンの口から、無念の咆哮が迸る。

 ピクピクと動いていた広く分厚い大胸筋が、その動きを止め灰色に染められていった。

 残すは首から上だけとなった段階で、メデューサはバーバリアンに近づいてきた。

「ねえ、あんたの股間の極太さま、感覚が残っているでしょう?興奮を残したまま。」

 メデューサの問い掛けに、男は鋭い眼光を返した。彼女は気にすることなく話を進める。

「石になっちまえば意識は眠った状態になるから、あまり意味はないだろうけど、いい夢は見られるかもしれないねえ。でもその前に…。」

 メデューサは男の前で跪き、石と化した腰布に触れる。薄い石細工と化していた布は、その衝撃で脆くも足元へと崩れ去った。

 天を貫く神の鉄槌と、贅肉のない引き締まった尻が、外気に晒される。

ゴクリッ。

 豪華絢爛という言葉が相応しい光景に、メデューサは咽喉を鳴らした。それは彼女の想像を越えていた。

「こいつはすごい。これほどの逸物、見たことないよ。あんた、掘り出し物だよ。」

 そそり立つ第三の足から目線を外すことなく、男に話し掛ける

「本当なら石にした後は粉々に砕くんだけど、あんたは特別に置いといてやるよ。そいつで楽しみたいからね。これはあたしからのプレゼントだよ。石化は、あんたが達するまで止めておいてやるから。」

 石の男自身をメデューサはいとおしそうに舐め始めた。

「実際に射精は出来ないけれど、射精感は得られるはずだよ。生身としての最後の快楽をじっくりと味わいな。」

「うむ、ぐう。」

 ぴちゃり、れろれろ、ぎゅっぱ。

 卑猥な水音が2体を除いて誰も居ない廃墟に響く。いとおしそうに舌を這わすメデューサをバーバリアンは驚きで目を見張りながら見下ろしている。

「あんた、こんなこと、されたことなかったのかい。」

「ううう。」

 気持ちがいいのか軽いうめき声をだしながら、バーバリアンは頷いた。

「以外だねえ。あんたほどのいい男なら、引く手数多だろうに。」

チロチロと微妙な舌使いをしながら、メデューサは素直に感想を述べた。事実、彼女は400年程を生きてきたが、これ程魅力的な魔羅をもつ男には、今まで出合った事はなかった。

「どうだい?気持ちいいかい?」

「くっくっ。」

 バーバリアンは何かに耐えるように顔をしかめながら、僅かに頷いた。

 それを見て、メデューサは満足そうに頷くと、急に舌の動きをミツバチの羽のように速めていく。舌の動きを止めることなく、彼女は最後の言葉を男に送った。

「私にできるすべての技を使ってやるよ。さあ、いっちまいな。」

「うおおおおおおお。」

 バーバリアンは快楽の頂点に達したのか、天を見上げ満足そうな笑みを浮かべながら咆哮した。それと同時に首元で止まっていた石化が再び始まり、瞬時に頭部を飲み込んでいった。

 どんな芸術家にも再現できないであろう、見事な戦士の裸像が完成する。舌先から糸を引きながらメデューサは名残惜しそうに男から離れ、改めてその全体像を見つめなおした。

「あんた、いいよ。ぞくぞくするぐらい魅力的だよ。その満足そうな表情も私の心を鷲掴みだよ。あんたは、これからそのご立派な姿で、毎夜私を慰めるんだよ。なあに、あんたも夢の中で気持ちいいんだから、一石二鳥だろ。」

 灰色に変わった男の頬を撫でながら、メデューサは独白する。

「それじゃあ、あんまり我慢をするのも身体に悪いから、まだ明るいけど、あんたの男、わたしの女で試さしてもらうよ。」

 豊満と呼ぶに相応しい、美しい裸体を隠そうともせず、再びバーバリアンに近づくメデューサ。そのほっそりとした手足を蛇のように、石と化した筋骨隆々の手足に絡ませながら、彼女は冷たい石の唇に舌を這わし、肉付きのいい官能的な腰を男の陽物へと沈めていった。

 

 人気が久しく絶えた廃墟に、歌うような女の嬌声が、いつ果てることなく響き渡った。

 

 

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