「まどろみ」
作:冷凍石


 砂塵に曇る黄色い太陽。荒野が広がる世界で、少年は戦車を駆るハンターになった。
 列をなす鋼の巨獣と武器を背負った獣。少年は頼りになる仲間たちと共に、賞金首と新たな世界を求めて戦車を走らせていた。


 キュラキュラキュラキュラ…。
 操縦室に響くキャタピラの音。僅かな振動が心地よい。
 ピピ、ピピ、ピピ…。
 突然鳴り響く機械音。耳障りな通信コールに眉をしかめ、『はんた』は回線を開いた。
 ピッ!
「おい、ヤバイって。石だぜ。石。人が石になってんだぞ。やめようぜ。」
 メカニックのモヒカン男。顔を口にして『ずしおう』が弱気な言葉を繰り返している。
「おいおい、機械を扱っていて、よくそんな与太話が信じられるな。迷信だよ。め・い・し・ん。」
 髪金の女ソルジャー。『あんじゅ』の呆れ顔が、モニターいっぱいに広がった。
「…。」
 ブツ!
 ゴーグルが特徴的な若いハンター。『はんた』は不機嫌げに通信を切ると、馴れた手つきで今回の目的地をモニターに映し出した。
「くうん?」
 バイオニック犬の心配げな鳴き声。集音マイクが捉えた『ポチ』の声に、『はんた』は戦車の砲身を左右に振って答える。


 荒野に立ち並ぶ石像の群れ。男女を問わぬ様々な像が墓標のように立ち並ぶ。
「道の彼方に石になった人間が建ち並ぶ化石の森があるとか…。」
 酒場で聞いた不気味な噂。話す男の顔は、理解外の現象に対する恐怖で満ちていた。
「人間が石になるわけないじゃないか!」
 見渡す限り広がる石像の森。石像の合間を縫い、『はんた』たちは奥に見える建物を目指す。
「皆、石にされたという噂です。」
 胸と股間に手を当てる女性の像。『はんた』は座席に深く腰掛けると、目に映る石像の製作過程に思いを馳せた。


「何ですか、あなたたちは。」
 突然現れた荒くれ者。平和は突然終わりを告げる。
「放してください。」
 掴まれた両腕。若妻は装甲車に連れ込まれた。
「いやっ、やめて!!」
 切り裂かれる衣服。出るところの出た丸みを帯びた身体が露になる。
「なんなんですか、それは?」
 待ち受ける巨大なカプセル。若妻はカプセルに投げ込まれ、無情にも扉は閉じられる。
「出してください。助けてください。あなた…。」
 不気味な沈黙。荒くれ者たちはニヤニヤと笑うだけで何もしゃべろうとしない。
 シュー!!
「キャッ!!いや!!」
 不気味な音を立て、頭上から噴出する白いガス。カプセル内がガスで霞む。
「ケホケホ…。あけて、ケホッ…。」
 咳き込む人妻。ガスは喉からだけでなく、直接皮膚からも吸収されていた。
「えっ。何、この感覚?はあはあ、身体が熱い?」
 ガスによる意外な効果。若妻の頬は赤く染まり、白い肌が内で渦巻く劣情を映してピンク色に上気する。
「ああ、たまらない。こんなの初めて…。」
 官能に満ちた甘い吐息。潤む瞳で虚空を見詰め、若妻は立ったまま、胸と股間に手を伸ばし悶え苦しむ。
「だめ、良過ぎる。こんなの、知らない!」
 自在に形を変える柔らかい乳房。しなやかな指が襞を掻き分け、親指は皮に包まれた突起を押しつぶす。
「ああん。いい…えっ、動かない?」
 ガスに秘められた第二の効果。手足の指は灰色に染まり、石の肌はその範囲を少しずつ広げようとしていた。
「いや!!指が動かない。こんな、こんなことって。」
 若妻の願いもむなしく進む石化。火照った体を持て余し、若妻は腰に、胸に、石の指を擦り付け、刺激を求め続けた。
「はあはあ、硬い。」
 硬い指に絡む淫液。普段なら痛く感じる荒々しい行為も、今は心地よい刺激の一つに過ぎない
「ああ、石の、ああ、指が、いい、そこ。」
 乳首を押し潰したまま石化した指。食い込む石の指をそのままに、胸は激しく円を描く。
「石、石になる。石になっちゃう。ああ、いい、いい、もうどうでもいい。来て。そこ。」
 快楽を追い求める淫靡なダンス。石化への恐怖と焦りが、若妻を絶頂へと押し上げる。
「ああ、いい、いく、いく、いく、あなたー!!」
 太ももを滴る夥しい液体。秘部は快楽でだらしなく開き、派手に愛液を噴出した姿のまま石化していった。
「ああ…、あ、あ、あ…。」
 絶頂の余韻を塗り込められた女性の裸像。屋外で女性を待つ石の台座には、ただ一言[快楽]とだけ彫られている。


「何、勝手に通信切ってんだよ!!」
 強制的に繋がれた通信モニター。腹立たしげな『あんじゅ』の声に、『はんた』のまどろみは破られる。
「おいおい、俺の決意表明を聞いてなかったのかよ。しっかりしてくれよな。」
 振りかぶるモヒカン。『あんじゅ』の説得に、ようやく覚悟を決めたようだ。
「お前が言うな!!」
 仲間特有の阿吽の呼吸。二人の掛け合いを聞き流しながら、もう一度だけ『はんた』は石像に目を向けた。
「やっぱ、気味わりーよ。さっさと建物へ行こうぜ。」
 砂塵を上げ連なる戦車。ブラド博物館と書かれた看板が『はんた』の目に映る。
「ブラド博物館?なんだこりゃ?」
 食い入るように看板を見詰める『はんた』。ハンター特有の勘が、新たな戦車の存在を嗅ぎ取っていた。
「…。」
 獲物を狙う瞳の輝き。すでに『はんた』の頭の中から、石像は消え去っている。
「わふ…。」
 女性の石像を振り返る犬。その本能が何かを嗅ぎ取ったのだろうか?
「『ポチ』、早く来な!!」
 よく通るソルジャーの声。僅かに躊躇した後、『ポチ』は仲間に向かって駆け出した。


再び訪れる静寂。石像は何も語ろうとしない。

 

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